虎と雪女


朝礼台に先生が立ち、注意事項を喋っているがこちらの身としては速く始めてほしい。



風が吹いているといっても気持ちいい程度であって、暑くないわけがない。




熱中症に気をつけてほしいんなら、もう少し短縮してくれ。





背の順で並んでいるので私は、後ろのほう。




私の前に並んでいる美景ちゃんが斜め前を向いて私に聞こえるように会話する。




「長いしー」

「はやくやればいいのにね」



周りの児童も同じ気持ちなのか、帽子で扇いだり近所の子とトークをしている。





「ところで雪ちゃん、虎のことなんだけどさ」

「またか」

「前のほうにいるから虎には聞こえないよ」

「うん。で、なに?」




いつ飽きるのかな、この話。




「雪ちゃんはぶっちゃけ、虎のことどう思ってんの」

「どうって……嫌いじゃないけど」

「じゃあ付き合うの?」

「そういうわけじゃないけど。それにあれが告白って決まったわけじゃないし」



あー、暑い。



「雪ちゃんそればっかりじゃん。決まったわけじゃないって…。本当かどうかの前に、雪ちゃんはどうなのさ」

「いや……」

「ウチはそれが聞きたいんだけど」




堂々と後ろを振り向いて聞く美景ちゃんに、私は先生の目がこっちを見てないか確認する。


が、先生はなにも気にしてないよう。



男子生徒ばかりを注意している。




「私は………分かんない」

「でも嫌いじゃないんでしょ?」

「嫌いじゃないけど、ときめいたりはしない」

「んー……難しい」




難しいじゃなくて、恋愛感情はないの。



そう言おうとしたら、先生の「では、移動をしてください」とのことで児童はバラバラとコートに向かった。