虎と雪女

私は雪女と言われているだけであって、いじめにあっているわけではない。


なにせ、この性格だ。


お父さん譲りの性格は私とお姉ちゃん。
色の白さはお母さん譲りだけど、私はお母さんみたいに綺麗じゃない。



それに、いじめなんて受けたら睨みと口で負かしてしまう。



「なあ雪女。今度の球技大会来るのか?」



五条が聞いてきた球技大会とは、やりたい人だけが来て参加する大会。


種目は毎回違うが、今回はバスケとドッジとバレーだった。



「行かないに決まってんじゃん」

「いや、お前が運動オンチなのは知ってるけどよ...」

「じゃあなに」



私が行っても邪魔になるだけだけど。



「だからさ、その......」

「おい虎。雪女なんか誘うのか?」



ニヤニヤしながら私のノートを写している、クラスメートの立松が五条の頬をつついている。

五条はそれが鬱陶しかったのか、パチコーンと腕を払いおとし、私に向き直った。



「ばっ、バッカじゃねえの!?

誰も雪女なんて誘わねえよ!!」

「えー、虎のう・そ・つ・き」



キャハッ、と気持ち悪く立松が五条の耳元で囁いた。



「なに、皆球技大会出るの?」



私は傍にいた葵ちゃんに聞いてみた。



「うん、このクラスの人たちは皆やるみたいだよ」

「っていうか虎が皆でやるぞー!って張り切ってたもんねー」



葵ちゃんの横にいた美景ちゃんも答えてくれた。


運動会は結構前に終わったし、7月の行事なんて少ないからなあ。
夏休みで皆とはあまり遊べなくなる時期だし、五条の言うことも一理ある。



「じゃあ、私もやろうかな」



空気を読めない程私は子供じゃない。

今年の夏の思い出作りも良いかもしれない。
来年は皆違うクラスになるかもしれないから。



「おっしゃ!雪女も来るんだなっ!」

「へえー、虎嬉しそうだなおい」

「はっ!?べ、別に」

「あれー、五条くん顔赤いよー?」



立松と美景ちゃんがニヤニヤしながら五条に近づく。
冷房はついてるはずなんだけどねー。