中々眠れなかった夜を乗り越え、その翌日。
鏡に写る自分の目元に隈ができているのを、姉ちゃんが鼻で笑った。
手提げカバンの中に体操服だけを入れ、暑い道を歩いて学校へ行った。
私が着いている頃には五条はまだ来ていないのが当たり前で、今日もどうせそうだろうなと思っていたらやはりそうだった。
「……いつも通り」
いや、これからかもしれない。
まだ朝だし。
既に教室にいた美景ちゃんに挨拶し、席に座ると勢いよく後ろを向いてきた。
「雪ちゃん、虎にコクられたんだって?」
「えっ……!」
おはようの次の会話がこれか!
バスケをして動くからか、今日は耳より高い位置でツインテールをしている。
ゴムにピンクのポンポンがついていて可愛らしい。
「な、なんで……?」
「うっそまじで!?」
手提げカバンを机の横にかけながら美景ちゃんを凝視する。
「いつ!?いつコクられた?どこで!?」
「ちょ、美景ちゃん……」
幸い、他のクラスメートは少なく、球技大会の話題で盛り上がっている。
美景ちゃんの言葉を聞いた者はいなかったようだ。



