虎と雪女

「泣くな……俺も好きだから」

「…っ、でも!さっき…ひっく、もういいっ…って」





その場にしゃがみこむ私と一緒にしゃがみこんだ五条。



床が冷たくて気持ちいい。







「それは…その……そういうのじゃなくて。押してだめなら引いてみろって、昨日読んだ本に書いてあったんだよ」





本?



押してだめなら引いてみろ。



その言葉は聞いたことがある。






「じゃっ、さっきのは……」

「引いてみたっつうか、なんつうかアレだ。けどさっきのことでイラついたのがほとんどで」





ごにょごにょと言いにくいそうにする。



じゃああれは、私のことが嫌いになったわけじゃないのか。

嫉妬というやつなのか。

そして本の入れ知恵なのか。



まだ、好きでいてくれているのか。





「………った」

「ん?」






五条が私の顔を覗き込んで首を傾げる。







「よかった……!」

「ーーーーっ!!」






五条の服を掴み、ほっとする。



そしてはっとした。




これって本当に本当の両想いじゃ……!?





「ずっと好きだった」

「五条……?」






頬にまだあった涙を指で拭き取り、いつもの無邪気な笑顔になる。







「しょうがねえな。これやるよ」






ポッケからなにやら取り出し、私の右手を取って、それを乗せた。






「これって………」







林檎味の、飴だった。