虎と雪女

「私は別になんでも........」

「うーん、じゃあバスケなんてどうかな?女子は見る限り少ないし」



黒板には女子3と書かれている。
確かに、少ない。


私は考える素振りをする。



「佐々原さんは、ドッジボールは好きじゃなかった気がするんだけど....」

「そりゃあドッジは、当たったら痛いし」

「バスケなら走ってボールをパスするだけでいいと思うんだけどな」



そう言う先生。何故ここまでバスケをすすめてくるのかは分からないが。

でもバスケが嫌だという理由もないし、やってみないと分からないものだしね。



「じゃあバスケやります」

「そうしてくれると助かるよ」



うんうんと頷いて3という数字を消して4と書き直した。


球技大会頑張ろう。


密かに意気込んでいると、先生の視線が私よりも後ろへいった。後ろといえば....。



「ところで虎。君はこの前バスケをやりたいと言っていたそうだね」



いきなりのことで驚いたのか、どもりながら「そ、そそうだけど」と呟いた。


美景ちゃんは楽しそうに事の成り行きを見守っている。私も美景ちゃん同様後ろにいる五条を見つめる。



「虎は運動神経もいいし、なんの種目に出てもやれると先生は思ってる」

「お、おう」



嬉しかったのか、ちょっと照れてる。



「でも、虎の好きな競技なら他以上にその運動能力を発揮できるんじゃないかな」

「....まあ」

「虎はバスケやりたいって言ってたんだよね。だったら先生はバスケをやるべきなんじゃないかなと思う」



終始微笑みながら虎に語る藤田先生。

「もちろん、嫌なら他のでもいいんだよ」と付け加えることも忘れない。

五条になにを伝えたいのかは、五条自身も理解できてないだろう。



現に首を傾げてる。



しかし、なにかピンときたものがあったのか、パァッと花が咲いたように笑顔になった。



「俺バスケやるっ!!」

「おう、期待してるぞ!」



満面の笑みを浮かべる生徒と先生。


それを面白そうに見る美景ちゃんと、なにか言いたそうにしている立松。