虎と雪女


飴を握ったまま、ぼんやりと眺める俺を他所に、目の前の女の子は「あ」と呟いた。




「冬美ーー、帰るぞ!」

「待って姉ちゃん!」





公園の入り口に向かって叫ぶので、俺もそっちに視線をやる。



姉ちゃん?



立っていたのは、女の子だった。




あれが姉ちゃんなのか。





「じゃあね」

「うん」




小さく手を振って駆け出そうとする女の子を目で追っていると、くるりと振り返った。





「またね」





その一言。たった一言で、笑った女の子。



先程までにこりともしなかった子が、微笑んだ。




その笑顔に、俺の中のモノが持っていかれた。




再び駆け出す女の子。




その後ろ姿が消えるまで、視線をやっていた。








飴を握る手に、力が入った。




空を見上げてみると、丁度雪が降り始めていた。