(虎視点)




恋愛や一目惚れというものを当時の俺は知らなかった。



初恋というものを経験したこともなかったし、あの頃までは異性を好きという感情がなかった。





あれは、小学校に入学して初めての冬のことだった。






友達と喧嘩して、ヤケクソになりながら公園で泣いていた。







「俺は悪くないもん!」




悪いのはあいつだ!あいつが俺にあんなことを言わなければ、喧嘩になんてならなかった。



外は寒いけれど、そんなことが気にならないほどに泣いていたとき。





「どうしたの?」





1人の女の子が話しかけてきた。



ぴたりと泣くのを止め、涙を手で拭いながら声のしたほうを見た。



鉄棒の前しゃがんでいた俺は、ゆっくりと立ち上がって女の子に向き合った。





「大丈夫?どこかいたいの?」






心配そうに覗き込む女の子に、目を奪われた。