「……なにやってんだよ」
開かれた扉の向こうには、教室にいるはずの五条だった。
頬にあった柔らかいものは、2秒ほどして離れた。
あれっ、なんでここにいるの五条。勉強はどうしたのよ。
いつもの、ふつうの、特になにもなかった日のいつもの私ならばそう話しかけるだろう。
しかし今は状況が状況だ。
山田に、頬にキスされた瞬間を五条に見られた。
好きな人に、見られた。
好いてくれている人に、見られた。
そんな感情がぐるぐる渦巻き、五条から目が逸らせず、同時になにも喋ることができなかった。
「おい、お前あんときのやつだろ」
「……球技大会のときは迷惑かけたね」
「お前今なにやったんだよ」
「なにって…頬っぺにキスしたけど」
五条の顔に、喜怒哀楽の怒は出ていない。
絶対零度のような、無表情。
小学生にこんな表情ができるのかと、疑問に持つ暇もなく冷や汗が出た。
「……もうなにもしないよ」
「ったり前だろうが。次やったら殺すぞ?なんなら今やってやろうか」
山田を嘲笑うかのごとく、見下す。
山田はそんな五条に一瞬眉間にしわを寄せた。
それが怒りからか、怯えからくるものなのかは分からなかった。



