キミだけ。






はぁー。


今日もあの気まずい雰囲気に耐えなきゃいけないのかな。

前みたいに普通に会話したいのに……




「朝から元気ねーな」



そう聞こえて隣を見ると、いつもと何も変わらない様子の坂下がいた。


「なんだよその顔。ふっ、ぶさいく」


「なっ!ぶさいくゆーな!」



あれ……?なんか普通にしゃべってる?


じゃあ、なんで昨日は怒ってたんだろ……


まぁ、しゃべれたんだからそんなことどーでもいいや!



「坂下ー。今日の一時間目なんだっけー?」


「…………。」



「坂下ー。おーい」


は?ムシ?何よ!やっぱりまだ怒ってんじゃん!


「坂下ってば!!」


「京」


「へ?」


「京って呼べよ」



そう言って、真剣な表情であたしを見つめる。


「なん、で……」


「二谷のことは名前で呼んでるだろ」


「だって。尚は、彼氏…だから…」


「秋也は?あいつのことも名前だろ?」



うっ……確かに。


しかもあきの場合はあだ名で呼んでるし……



「そう、だけど。いきなり名前とか……ムリ……」



「なんで?」


「なんでって…それは……」


「俺の名前知らねーの?」


「知ってるけど…」


「そ、じゃあ今日からよろしく。名前で呼ばない限り話聞かないから」



そう言うと、あくびをしてねてしまった。



……むっ、ムカつくー!何よ、名前くらい呼べるっつーの!!