「お兄ちゃん、早くしないと遅刻だよ」 「んー」 「私、先に行くからね」 「んー」 ばたん、と玄関のドアの閉まる音がした。 それから、静寂が訪れた。 両親はいつも、俺たちより先に家を出る。 だから今は、俺一人しかいない。 時計を見ると、もう8時20分を過ぎていた。 あと10分で、遅刻だ。 この家から学校まで、全力で走って10分。 頑張れ、カイ。走れ。