「そんな怒らないでよー。
旅行、行きたくないの?」
「行きたいわよ。」
「お。じゃあ良いジャーン!」
「でも。」
ちらりと未だに正座をしたままのくろに視線をむける。
「それはくろと、くろが、本当に自分の意思で行きたいって思ったときに行きたいの。」
「光、僕、思ってるよ?」
「本当に?」
「うん。」
「でも、この前、いえ、一昨日の夜、
どっか知らないところの温泉より光とこの家のお風呂に入った方が楽しいって言ってたじゃない。」
「う。」
そうなのだ。
ついこの間そう言って
浴槽の中で抱きついてきたばかりなのだ。
それなのに、
手のひら返したように
旅行に行きたい?
絶対くろの意思じゃない。
唆されたにきまっている。
私だってくろと温泉には行ってみたいしいろんな所に旅行もしてみたい。
でも。
今回のこれは
話が急すぎるし、怪しい香りが
ぷんぷんする。
私はまた那都君に視線を戻し
どうだと言わんばかりのオーラを出した。
「いや、それより何さりげなくのろけとんの!」
「で?どうして行きたくなったの?」
「はいスルー入りましたー。」
いつものろけられてるんだから
良いじゃない。


