ついつい軽く笑いが顔に浮かんでしまう。


しかし彼は自分が笑われたことよりも、俺の言葉のほうが気になったらしい。

いや、もしかしたら笑われたことにも気付いていないかもしれない。


どこまでもわかりやすい好奇心と野次馬心を浮かべた目でこちらの様子をまじまじと窺っている。

まるでどんな転校生が来たのかと他のクラスまで見に行く学生と同じような目だ。


今か今かと次の言葉を待つ神崎くんがだんだん本物の犬のように見えてきた。


そんな彼にもう一度軽い笑いを落として、俺は小さく言葉を続けた。




「内容は毎回一緒なんだ。書いてあるのは一言だけ」




そう。書いてある内容は毎回同じ。

数ヵ月間一度も変わったことはない。

ただの一度も。