ブラックレター~高嶺の花に恋します~





彼が帰ってからゆっくり読もう。


そう思ったが、自分が家に上げた手前早々に帰れと言えないのが現状。

数秒前の自分が非常に恨めしい。

何であんなこと言ったんだ、俺。

玄関先で帰せばよかった。




「俺、いっつも気になってたんですよ!あの手紙の内容!」




そんな俺の心境など露知らず。

神崎くんの興味は相変わらず熱心にブラックレターに注がれていて。

嬉々としてその手紙について触れだした。


この調子になった彼は、話が一段落するまで帰ることはないだろう。


これは当分手紙は読めそうにない。

本当、さっきの自分が憎い。


というか何故神崎くんはそこまでブラックレターにこだわるんだろうか。

中身を見せたことは絶対にないはずなのに。