「毎回読んでるんですか?」
「一応読んでるよ」
軽く答えたその答えに神崎くんの目はさらに輝く。なんでだ。
(…一応、ね)
よくそんな言い方ができたもんだと自分でも思う。
本当は毎回しっかり目を通しているくせに。
楽しみに待っているくせに。
もちろん誰にもその中身を見せたことはない。
届くものとしては珍しい真っ黒な封筒はいつも見つけやすく、一番先に手が伸びるものでもあった。
今回も封の開いている段ボールからはあの黒が微かに見えていて。
紙質もこの数ヵ月変わったことのないそれを俺が見間違えるはずはない。
本当は今すぐにでも手を伸ばしたい衝動に駆られているが、神崎くんがいる手前我慢する。
あの手紙は絶対に一人で読みたいから。


