会えない距離を悲しいと思わせた人でもあるから。
もしかしたら人はこの感情を一目惚れと呼ぶのかもしれない。
もしそうなら、私は今人生で初めて一目惚れというものを経験しているようだ。
一目惚れなんてないと思っていたけど。
そうじゃなかったみたい。
だって間違いなく私はあの人が好きだもの。
心ごと持っていかれたもの。
ただひとつ。ひとつだけ、私には気にかかっていることがある。
「…ねぇ、絢子」
「ん?」
「好きに時間は関係ある?」
小さな声で絢子に問い掛けたそれは、私の一番の不安要素だった。
私が彼のことを知ったのはつい最近のことだ。
彼を知ることが出来ないくらい、それくらい私の世界は狭かった。
そんな私が彼を好きだということが許されるのだろうか。


