たとえばネットの世界と現実とは違う。
家の中と家の外の表情は違う。
友達の前と家族の前でもやっぱり違う。
向き合う相手や環境によって人の態度や表情は変わっていく。
それは自然なことだ。
私なんてお洋服によってだって立ち振舞いが変わる。
好きな人を前にすれば好意的に見られようと人は声や表情を変えるし、その逆だってもちろん有り得る。
私はそれを痛いほどわかっているから。
だから書けなかった。
「でも好きなんでしょ?相沢さんのこと」
「…うん」
そうなのだ。
それがわかっているのに、困ったことに恐らく私は彼がどんな人でも好きなのだ。
幻滅なんて出来ないのだと思う。
たとえ彼がどんなに嫌な人でも。
そこに理由なんてない。


