それは私が悪い。
だって仕方ないじゃないか。怖かったんだもん。
絢子のことだから絶対いらない情報まで持ってくる気がしたんだもん。
面白半分で過去の恋愛ネタとか持ってくるに違いない。
そんなの絶対に聞きたくはなかった。
だけど、そうじゃなくて。
そういうことじゃなくて。
「…本当のあの人がどんな人か知らないのに、迂闊にどこが好きとか…書けないよ」
本当のあの人を知らない。
どんなものを好んで、どんなふうに話して、どんな世界を見ているのか。
何が嫌いで、何を欲するのか。
当たり前だ。だって私は彼に会ったことがないのだから。
でもだからこそ迂闊なことは書けなかった。
それは失礼なんじゃないかと思ってしまった。


