ブラックレター~高嶺の花に恋します~





あぁ。どうしよう。

なんだかとてつもなく嫌な予感がする。




「レイトショー。チケット二枚買っちゃった」


「ぇぇぇえええええ!?」




ハートがつきそうな勢いでそう言った絢子の言葉に、私の絶叫が部屋に響いた。


なんだ、それ。どういうことなんだ。


わけがわからないという顔をしているであろう私に、えへっと笑いながら見せられたのは二枚のチケット。

ぴらぴらと揺れるそれに印刷されている時間指定とタイトルから、彼女が本気なのだということが嫌でもわかった。




「え、ちょ、ちょっと待って。い、今から…?」




だけど少し待ってほしい。


私にとって外に出るという行為がどれほど大変か。

そんなに簡単なことではない。


それは彼女も十分理解しているはずである。