実際に彼女以外から黒い封筒で手紙が来たことはこの一年のうちに数回あった。
ただどれもあの封筒とは違ったのですぐに見分けはついたわけだが。
この一年で俺は封筒を見ただけでそれかどうか判別できるようになった。
ある種の特技になりつつある。
違うとわかるたびに肩を落としていた姿は誰にも見せられない。
封筒を受け取り神崎には気付かれないようにごくりと喉を鳴らす。
バカみたいに緊張している自分に心のなかで笑った。
封筒は、あのブラックレターと同じだ。
そっと見れば宛名は俺。
その見覚えのある字に、間違いなく彼女からのものだというのがわかった。
裏返せば封筒の端には【高倉真麻】の四文字。
正真正銘彼女の名前だ。


