ブラックレター~高嶺の花に恋します~





大変なのはお前の頭の中だと言わなかった俺は偉いと思う。


バタバタと楽屋に駆け込んできたのは、今も変わらず俺のマネージャーをつとめている神崎。

この一年で少しは大人になった(と思われる)彼を俺は呼び捨てで呼ぶようになっていた。


それだけ信頼に値するようになったとも言える。

まぁ、まだまだだけどな。


少し伸びた髪を後ろで結ぶ彼は実はなかなか格好いいことが判明し、現場で噂の的になっていることもある。

本人にその自覚はまったくないようだが。




「あ、すいません!っていうか!大変なんですよ!」




俺の声に頭を下げたのも束の間。

さっきよりも大きな声で慌て出す神崎に俺は眉をしかめる。