「突然色がね、わっと入ってきて…その人だけよく見えたの」
笑った顔が見えたのだ。ほんの一瞬だけ。
その一瞬で、私の世界に今までなかった色が飛び込んできた。
キラキラと、何かが弾けた。
そしてぎゅっと胸が苦しくなった。
「ごめん。ちょっとよくわかんない」
あの瞬間を思い出しながら語る私に、絢子はストップと言いたげに片手を前に出す。
そしてうんうんと唸り始めた。
どうやら私の言葉の表現では絢子にあの瞬間の衝撃を伝えられなかったらしい。
自分の言いたいことが相手に伝わらないのは今に始まったことではない。
私自身でも言葉にするのが難しい瞬間だった。
絢子が理解できないのもわかる。


