ブラックレター~高嶺の花に恋します~





気にしないようにしていても無意識に傷付いてしまうのだ。

特に相手の表情に。


だから絢子のそれを見ないようにと、私は暗闇のなかに逃げ込んだ。


私のそんなところを知っているからだろうか。

暗闇の外から絢子が慌てたように言葉を続けた。




「た、たしか今ドラマ出てるよね?ちょい役だけど」


「……うん」




その言葉に鼻から上を布団から出してみる。

すると絢子はホッとしたように顔を緩めた。


どうやら心配させてしまったらしい。


さすがにそれは申し訳ないなと思った私は、もそもそとベッドの上で座り直す。

そして枕を抱えながら改めて絢子と向き合う形になった。


そんな私に絢子が安堵の息を吐いたことを私は知らない。