今にもキスをしてくれそうな彼女のテンションに私はあからさまに戸惑うしかない。
そんな若干引き気味な私をよそに絢子は抱きついた体勢のまま嬉しそうに語りだした。
「だって前のあんたなら、会えるわけないじゃんって言ってたよ!確実に!」
「…今もそう思ってるよ」
その言葉に抵抗を止め俯きながら呟く。
間違いなく今だってそう思ってる。
彼に会えるわけなんてないと。
会いたいと思う。
会えたらどんなに幸せかと心から思う。
でも会えるわけがないんだ。
だってそもそも私と彼では住む世界が違いすぎるのだから。
彼は遠い月の住人。
私はここから眺めていることしか出来ない。
懸命に手を伸ばしてみても届きはしない。


