ブラックレター~高嶺の花に恋します~





彼が人気になると同時に知りたくないと思っていても思い知らされるこの遠い距離。


彼の姿を見るだけで笑顔になれていたのは最初だけで。

歳月を重ねるほど、その姿に強い悲しみを覚えるようになっていった。


胸の奥がぐっと詰まって、呼吸が消えるような。

そんな悲しみが私を包むようになっていた。


私と彼は一体どれくらい離れているんだろうか。

きっと私が考えるよりもずっとずっと遠いのだろう。


地上から見上げる月のように。


そう考えるようになっていってしまった。


そしてその遠さをわかっていながら思ってしまうのだ。




「…会ってみたいなぁ…」




身の程知らずにも程がある。


でもポツリと口から漏れたそれが、紛れもない私の心の声だった。