完全に一目惚れのお洋服だった。
裾に描かれたいくつもの時計たちは、まるで私が彼を好きな時間を刻んでくれるようで。
本物の時計のようにその針に想いを乗せてくれるようで。
彼を一人で思うとき着たくなるのがその服なのだ。
想いを服に乗せるなんて変な話かもしれないけれど。
私にとって抱えきれない想いを乗せられるのは大切なお洋服だけ。
もちろん絢子は私がそう思いながらお洋服を着ていることを知っている。
「どっちも結構クラシカルな感じだし?相沢さんの隣でも着れちゃいそうな感じ?」
「ちょっ!絢子!やめてよ!」
ニマニマとこちらを見る絢子の悪い笑み。
その言葉と顔に私は目を見開いて声を上げる。
そして一気に顔に集まる熱。


