「なんで翼が
 そんなに泣くんだよ。
 泣きたいのはオレの方だ」



全てを話してくれた後に
棗はそう言った。


「じゃあ泣けばいいのに」


「アホか」


棗が雷の他に
怖れているものは
病院だった。


病院での治療は彼にとって
苦痛以外のなにものでもない
と言った。


それよりしばらく
あおいさんの愛した
北海道にいて


気持ちを落ち着かせたいと
考えている。


お目付け役の浅木先生に
知られるのが怖い。


少しでも異常を感じれば
棗の父親は彼を
病院に閉じ込めるという。


なるほど了解、と
私は思った。


病院治療を無理に
薦めてはいけないな。


時機を見て少しずつだ…