瞳の中の碧い海



あおいは血まみれになって
即死だったのに


棗の方は
全身打撲だけで済んだ。


それより重大なのは
彼の心の傷。


彼は正気では
いられなくなった。




父親には


「おまえが
 勝手なことをするから
 こんな事になるんだ」


そう冷たく
言われただけだった。



事あるごとに
目の前で再現される


事故の記憶。


毎晩夢でも
同じものを見る。



更に記憶は遡り


鬼のような形相の
義母の叫び声。




「おまえなんて
 生まれてこなければ
   よかったんだ!」




棗はパニックを起こし
その度に取り押さえられた。



事故後の処理は
父親が淡々とこなし



棗には何の責も
問われないまま



あおいの死は
終わったことになっていった。