瞳の中の碧い海




あおいはあおいなりに
棗を喜ばせようと
いつも必死。



棗が少しでも元気がないと



「ナツ、
 おうたうたってあげるね?」



と言う。


オレが元気ないのは
おまえの世話で
疲れてるからなんだけど…



「はーなさーくおーかのー
   まなびーやにー♪」


「おい……
  なんだよその歌!?」


「校歌だよ?」


「校歌かよ…」


「あ、ナツ笑ってくれた!
   あおいも嬉しいよ」



抱きついてきて
顔中にキスの嵐だ。



「わかった、わかったから…」



「うふふ。ナツ、だいすきよ」



彼女がそう言って笑うのは


棗が跡取りだからでも
お金持ちの息子だからでも
見た目がきれいだから
でもない。


付加価値のない
彼自身を必要とされたのは
棗にとって
初めてのことだった。