深夜に棗のベッドの中で
ふっと目を覚ました時だった。



暗闇の中
手探りで
彼の肌を探す。



ぐっすり眠っている
様子なのに


彼の腕は
そっと抱き寄せてくれる。


彼の体温を感じて
幸せな気分で
再び眠りに落ちようとする。



「あおい…」



苦しそうに棗が呟く。



絶望的な寝言だった。



彼の方を確認すると
苦悶の表情を浮かべ


その目にはうっすら
涙が浮かんでいる。



これが彼の本心だと
直感的に悟った。



左手の薬指の
思い出の品…。





それでも
何があったのかは
訊かない方がいいんだろうな。




夢を見ることが出来たのは

一瞬だけだったか…。