ぼくが福岡に来たのは

親が離婚したからだ。


学校から帰るといつもお母さんは泣いてた。


そしてぼくに決定を迫るみたいに、

繰り返しこう聞いた。

「お父さんと離婚していい?」



毎晩繰り広げられる、

お父さんとお母さんのバトルを見るのに

疲れてた。


だから、もういいって思った。



そしてお母さんとぼくは東京を離れて、

お母さんの実家のある福岡へ。

お父さんと6歳の弟は東京に残った。



福岡に来てしばらくの間

おばあちゃんと3人で暮らしてたけど

やっぱりお母さんが

ばあちゃんとケンカするので

6畳と4畳半しかない、

汚いアパートに移り住んだ。



お母さんは目を輝かせてこう言った。

「少しの我慢よ。

そのうちお母さんがお金いっぱい稼いで

きれいなマンションに住めるようにするから」


まだその計画は果たされてない。

期待もしてないし

だいたいどうやって果たすんだよ。

絶対無理でしょ。



今夜の12時に家を出て、

バスに乗って「今泉」に行く。


家を出ることは難しくない。

お母さんは夜、ホステスをしてるから

帰ってくるのは明け方か・・

帰ってこないか、のどっちかだ。


天井を見ながら・・

どうするか迷ってた。



でもすでに頭の中では行く準備をしていた。


人と会うのが嫌いなぼくが

なぜこの時行く気になったのか

いまだによくわからない。

ずっとひとりでさびしかったのは事実だ。



12時に着くには

家を11時15分には出ないと間に合わない。



どんな服で行ったらいいのかな・・?

お金はどれくらいいるのかな・・?

クラブのメンバーってどれくらい来るんだろう・・?



頭の中をグルグルグルグル

不安と期待が渦巻いていた。