キスなんかじゃ目覚めない


「おはようございます、倉敷くん」

「誰だよお前」

「あなたのクラスの委員長です。今日は生活指導の為にここにいます」

「‥‥‥別に、俺が制服をどー着ようと髪染めようとピアス開けようとアンタに関係なくね?」

気だるそうに視線を寄越す倉敷くんにひくりと頬っぺたが引きつるのが自分でも感じ取れたが、ここで口論しても始まらないじゃない、と自分を宥めてプリントにシャーペンを走らせる。

「そうですね、関係ありません」

「だったら、」

「あなたが制服を着崩して先生に怒られても髪を染めて将来禿げても無意味に体に穴を開けても親にもらった体になんてことを、なんて言うつもりは私にはまったくありません」

一気にまくしたてれば、倉敷くんはまさかそんなことを言われるとは思っていなかったのかぽかんと口を開けた間抜け顔で私を見ていた。なにその顔、面白いんだけど。

「でも、今ここでだけは関係があるんです。だって私は委員長で、あなたは素行の悪い生徒だから。けど、ここで倉敷くんを先生に突き出すのは色々面倒なんですよね、主に私が」

「‥‥‥はぁ?」

「なので、提案です」

努めて笑顔を作り、倉敷くんを見上げる。彼は意味がわからないと首を傾げたが、そんなことはそれこそ私には関係ない。生活指導のプリントではなく遅刻者名簿にチェックを入れながらゆったりとした口調で私は彼に提案する。

「今から教室に行くまでの間、そのパーカーを脱いでズボンを上げてピアスを外してください。教室に行ったら戻して構わないので」

「はーあー?意味わかんねぇ、誰がやるかよ」

「あなたは今からこれを持って職員室に行かなければいけないからね」

はい、どうぞ。手渡したのは遅刻用紙でしっかりと彼の名前を記入してある。今日から生活指導強化週間が終わるまでは遅刻者には私直々にこれを配る手筈になっている。当たり前だが、彼は不機嫌そうに顔をしかめてぐしゃりと用紙を握り潰した。

「俺に指図すんじゃねーよ」

「指図じゃないわ。お願い、よ」