可愛い弟くん



ビクビクしながら教室に入る。

昨日とは違い、普通の光景だ。

自分の机へと向かう。

途中、誰かに足を引っ掛けられた。

「きゃっ!」

転ぶと、上からクスクスと笑い声が降ってくる。

顔を上げると、

梓が私を見ていた。

「哀川さぁん、どーしたのぉ?」

足を掛けたのは、この人だ。

佐々木 梓。

去年同じクラスだったが、関わりはなかった。

挨拶は何度かしたけど、態度がいつも冷たかった。

なぜかは、わからない。

私は無視して立ち上がり、机に鞄を置いた。

一応 中を確認する。

今日は何もなかった。

その瞬間、ものすごく ほっとした。



大丈夫。多分、もうすぐ、清佳が来る。

今は独りだけど、清佳が来たら、絶対大丈夫………。



しかし、朝礼のチャイムが鳴っても、
清佳が教室へ入ってくることはなかった。