「ということは、結衣ちゃんがライオン? 彼女はインパラかシマウマの子ども? それとも……、ウサギかな?」



麻美さんが、くすくすと笑いだす。



「笑わないでください、私がライオンでも、あんな子は食べたくありませんから!」



確かに、あの子は怯えた目をしていた。



悔しいけれど、本当に小動物みたいな可愛らしい女の子。
たぶん二十歳を過ぎたばかり、三十路目前の私より五歳以上は若いはず。私とは明らかに肌艶が違っていた。



思い出すだけで、腹立たしさと悔しさが蘇る。



はあ……、と大きなため息をついた私の肩に、麻美さんの手が優しく触れた。



「結衣ちゃん、辛いだろうけど早く忘れちゃいなよ」



私を慰めようとしてくれている穏やかで優しい声。



だけど、誤解しないでほしい。
私は浮気されたことが悲しいんじゃない。



それより隆太に嘘をつかれたこと、浮気の相手が私よりも若くて可愛い子だったことが悔しい。