「ジョーカーはきっと恵比寿が持ってるぜ」

神堂蓮が、だるそうな声で吐き捨てるような口調で言う。

「それを言ったらアカンだろが」

恵比寿舜がトランプを一生懸命シャッフルしながら、蓮を軽く睨んだ。

きっと恵比寿舜がジョーカーを持っているのだろう。

「だいたいババ抜きとか懐かしいというか、くだらないというか、トランプ持ってきたの誰だよ」

高宮尚途が恵比寿の持つカードの中から一枚抜き取り、視線を圭斗に向けた。

「おい待てコラ尚途。ババ抜きをバカにすんじゃねぇよ」

トランプを持ってきた張本人の西園寺圭斗がペシッと尚途の頭を叩いた時、

「くっそぅ。ババ来やがった」

恵比寿のカードを抜き取った尚途が舌打ちをしながら呟いた。

「あっがりー」

忸晞洸がドヤ顔をして、大きく伸びをする。


今日も、この5人の少年は暇つぶしに励んでいた。

「おいお前ら。時間だ。今日は億万長者で有名の手塚グループがターゲット」

圭斗が立ち上がる。

この夜叉陣怪盗と世間から言われている5人…いや、6人の頭が西園寺圭斗である。

「まだ1つも真のカケラが見つかってない。朱々を早く助けないと手遅れになる」

圭斗はそう続けた。

その声を聞くなり、団欒気分だった5人の少年の目の色、空気までもか殺伐とした。

この5人は、世間が恐れる怪盗であり、殺し屋でもある。

そのワケは、たった1つ。

たった一人の仲間、朱々を助けるために、5人の少年は今夜も飛び出すのだ。

古くさい1つの部屋から。

弱気で臆病なまだ15歳の小さな心から。

これは、私が知る、優しい少年達の物語。