翌日、バイトに行くと藤野先輩はてきぱきと珈琲豆を挽いていた。
「山吹、おはよう」
透き通ったその声には裏も表もない。今日も藤野先輩はありのままだ。
「おはようございます。昨日はクッキーありがとうございました」
「クッキー、湿気てなかった?」
「え……」
食べてない、なんて言えない。浅黄の奴が全部食べた、なんて言えない。
「い……いや、そんなことないですよ。美味しかったです」
「そっか」
朝九時に喫茶店がオープンすると、開店前から並んでいた客が我先にと店に入ってくる。
「いらっしゃいませ」
私はこの喫茶店が大好き。珈琲の香りも照明の加減も、何もかも大好き。
