「楓、あのさぁ」
「何?」
「キャラメルマキアートつくって」
「私これからバイトだから」
浅黄は茶碗ひとつ洗ったこともなければ、掃除もしない。本当に何もしない。
つくづく思う。こんな家政婦みたいな生活するはずじゃなかったのに。もっと自由気ままな大学ライフを送るはずだったのに。
――玄関のドア越しに、能天気な笑い声が聞こえた。テレビでも見てんのか。
「山吹、おはよう」
「おはようございます」
私は喫茶店でバイトをしている。そこはサークルの先輩のお家がやっている喫茶店で、それなりに充実している。
「あのさ、山吹。明日の午前って空いてる? ちょっと人手不足なんだよ」
「えっと……」
私は手帳を取り出す。
「無理ならいいんだけど」
申し訳なさそうな顔をしているのは、映画サークルの藤野先輩で、いつも何かとお世話になっている。
「大丈夫です」
「よかった。じゃあ、明日よろしくな」
藤野先輩はホッとしたように、いつもの笑顔に戻った。
