ロッシュの限界


「ーーーね、委員長、手ぇ出して?」
「…、え?」


急に聞こえた明るい声に驚いて顔を上げると、さっきまでの空気を吹っ切るような優しい笑顔の佐藤。
よくわからないまま、あたしは無意識に右手を差し出していた。
すると、居所なく空中をさまよったその手を佐藤の右手がすくい上げて


「…これは?」
「うん?握手」


向かい合う形で立っていたあたしたちは今何故か握手をしている。
戸惑うあたし。でも手は離せない。


「ごめんね委員長」
「さとう…?」
「ちゃんと、解ってるんだよ。ほんとに」
「え…うん…」
「好きだけど、それだけで。付き合いたいとか…そんなんじゃなくて」
「ごめん、あたし…」
「だから言わなくて良いって。解ってるから」


大丈夫、と言うように笑う。
その笑顔があたしには凄く切ない。