あたしがここから逃げ出すより先に佐藤の口から転がり落ちた言葉。
「好き、だ」
ご丁寧に二回も。
それは少なからず、心のどこかで予感していた言葉で。
けれどもあたしの呼吸を止めてしまうほどには充分の威力があって。
あたしはあっさりと言葉をなくしてしまった。
「…っ」
目の前がチカチカして眩しい。
いつのまにか太陽の位置は低くなっていて、その光は濃いオレンジになっていた。
落ち着け。落ち着け、あたし。
ゆっくり呼吸を繰り返して気持ちを整える。
佐藤に好きだと言われた。
それがどういう意味か、どんな種類の好きなのか、解っているつもり。
…だからこそ。

