「――あ、ねぇねぇ。コレ見て! 超可愛くない? ヤバーイ」

「あ、リン。メイク変えた? めっちゃ似合ってるー」

「え。うっそ。ありがとー」



様々な会話が入り乱れる、グループ内。

二つの机を囲んで、大勢の女子たちが雑誌を読んだり髪をいじったりと各々好きなことをして会話している。

……遠巻きにされていることなんて、気にもしないで。

窓の近くの席に座っていた私は、誰にも気づかれないようにため息をつくとふと、窓に映る自分が視界の隅にひっかかり私は外を見るフリをして自分を見つめた。

誰だろう。これ……。

毎回思う。女子グループの面々と一緒にトイレで化粧直しをするたびに、メイクをし終わった後に、いつも。

茶色の胸より下あたりまである髪はゆるく巻かれ、睫毛はつけまでバッサバサ。

派手なメイクに、着崩した制服。

皆に合わせるために必死に練習したネイル。

窓に映る私は、いかにもギャルで私は微かに眉をひそめた。

何やってるんだろう。私。

自分を殺して、彼女たちに合わせてばっかりで。何がしたいんだろう。

自分のやっていることが私自信分からなくて、重たいため息をつく。

私の入っているグループは学校でも有名な不良ギャルの集まり。

黒髪なんて一人もいない。金髪に茶髪、ピンクブラウンと様々な髪に派手なメイクの集団が、昼まで学校にいることはまずない。

大抵は誰かが授業に飽きて、学校をサボって遊びに出かける。

だから、今日みたいにお昼まで学校にいることは結構稀だったりする。

ぐるりとあたりを見回せば、クラスの皆は私たちに畏縮して隅っこで時折こちらをチラチラ見ながら何やら小声で話していた。

……私たちのことを話してるんだろうな、ってのはバカでも分かる。

彼らから視線を外し、ケータイを見れば画面に大きく映った“GAME over”の文字に、私は瞬きを繰り返す。

あ、そう言えば。ゲームやってたんだっけ……。




「――あ、一花(イチカ)やっと気づいたー? もうー。さっきから何回も言ってんのに全然反応しないからさー」

「てか、一花! そのネイルどうしたの!? 超カワイー」

「……嗚呼。コレ? 普通に。適当にやった」

「適当!? これが? 一花すごーい!!」




目を丸くして拍手する素振りを見せるピンクブラウンの髪のギャル、美穂。

……この子。なんっか苦手なんだよなぁ。

何なんだろう。このたっかい声。

どっから声出してんだろ。喉いためないのかなー。

ぼんやりとそんなことを考えると、また違うギャルがポッキーを私に向けて来た。



「てかさー、一花ホンットクールだよね。カッコイイ」

「ホントそれ!! クールで美人で、最高じゃない?」

「モデルさんにならないのー? この前もスカウトされてたじゃん!」

「……あんたもね」




彼女の言葉を皮切りに、今まで各々自由に話していたギャルたちが私の話しで盛り上がる。

……クールじゃなくて、ただ単にアンタ達が嫌いなだけなんだけどね。