「とにかく、お話は聞かなかったことに致します....理解いただけたのなら広間へどうぞ

お食事の用意が出来ました」




「このっ....!言わせておけば!!」




――煽りすぎてしまったか。




冷や汗が背中を伝う。
隊士達は抜刀寸前で私は後ろ手に包丁を握った。




「........」




緊張が走る。




そんな空気を破ったのは、





またも沖田さんだった。




「伊勢ちゃ〜ん」




「はひっ」




行ったと思っていたのにこの人は....きっと話を最初から最後まで聞いていたのだろう。




情けない声を出してしまい、俯く私に沖田さんは近づいてきた。




「貴様っ!!」




「何?君たちの会話なんか筒抜けだよ
本気でそう言う事考えたいのなら花街でも行くんだね」




沖田さんがひと睨みすれば彼らはあっさりと刀にかけていた手を離し立ち去った。




ホッと溜め息をつくと顔を覗き込まれる。




「ふーん」




「な、なんでしょうか」




「僕たちのこと、殺したいと思わないんだ

僕てっきりあの人たちの手を取るかと思った」




意外そうな顔で言われてしまい、まあそう思われても仕方がないかと再び食材に向き合う。




「みくびらないでください、
私は貴方達と同じようなことはしませんし

彼らとも違うんです」




「違う?どこが?

芹沢さんを慕っていて、それを殺されて恨んでる....どこが違うの?」




私の口から何を言わせたいのだろうか。




「あなた方を手討ちにすれば、芹沢さんは戻ってくるのですか?

....戻りませんよね?

ですから、無意味な殺生なのです!
考えが違うのだと思ってください」




鼻息荒く、言いきれば沖田さんは一瞬ポカンと口を開けてほうけた。

「なんですか」とでも言いたげな顔をすると今度は腹を抱えて笑い出す。




自由な人だ。




「....何か、おかしな事でも?」




「ククッ....ごめ、矛盾してるなぁと思って....アハハッ」




この人はよく私を馬鹿にして笑う。
でも、あまりにも楽しそうに笑うものだからつられてしまいそうになる。




しかし言葉を思い返せば馬鹿にされているので眉間にシワを寄せる。




「矛盾....してますか?」




「フフ、うん?だって君は活かせないなら殺すなって言ったでしょ?

けれど今は敵を殺して芹沢さんが生き返るなら手討ちにするって口ぶりだった



これって矛盾じゃないの?」