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文久三年 九月二十五日




壬生浪士組の屯所では、
広間に隊士が集められていた。




「隊名を改める?」




「ああ、壬生狼っつーのも気に入ってはいただろうが
会津藩からの命名だ」




「おお!」




土方さんの一言で歓喜の声が上がる。

隊名が変わったのはきっと芹沢さんの粛清が終わったこともあるのだろう。
節目とでも会津藩は言いたいのだろうか。




私は隊士でもないのに、広間に連れてこられた意味が分からず視線をさまよわせていた。




食事を用意する際や雑用の際に顔を合わせたことのある隊士、

芹沢さんのもとへ通っていた頃親しくなった隊士は私の存在にさして疑問を持っていないが。

その他はチラチラとこちらを見てきた。





「な、あの女子誰だ?」

「さあ」




あまりの居心地の悪さに
ふと、初めてここの道場へ足を踏み入れた時を思い出す。




「あの時も芹沢さん、たいした説明してくれなかったから視線を浴びたな....」




クスリと笑えば一瞬で虚しさが襲ってきた。
共感するはずの人がもうこの世に居ないのだから仕方ない。




私は気配を消すようにつとめた。




「それで?新しい名前って?」




藤堂さんが待ちきれないとでも言うように詰め寄れば、土方さんは鬱陶しいとでも言いたげな顔をした。




「そう焦るな、隊名は俺が言うもんじゃねぇだろ」




「!」




全隊士の視線が、近藤さんに移った。




ついこの間までは芹沢さんと近藤さんの二人が組の頭だった。しかし今となってはもう一つだけ。




きっと芹沢派の反発と比例して
団結力も上がるだろう。