屯所の一室に着いたかと思えば、畳に叩きつけられる様に肩からおろされた。
受け身も取れず鈍い痛みが体に走る。




顔を上げれば、そこには難しい顔をした隊士が数名いた。




斎藤さん、沖田さん、藤堂さん、近藤さんが居るとなると全員幹部だろうか。
私は体を起こして座ると視線の行き場がなく、俯いた。




「まあそう固くならんでくれ、と言われても....無理か」




ああ、やはり近藤さんは優しい。
けれど芹沢さんのことがあったせいか、以前のように穏やかな気持ちで顔を見れなかった。




ここにいるのなら、直接手を下していなくても芹沢さんの暗殺に同意したのだろう。




「芹沢さんは....とても良い方でした」




ポツリ、ポツリと言葉をこぼす。
分かってもらおうだなんてこの際思っていない。私はこの人達に後悔してほしいと思ってる。

芹沢さんを殺したことは間違いだったと。




「確かに、お酒が入ると行き過ぎたところがあると耳にしました

しかし芹沢さんは毎回悔やんでいて、
馬鹿なことをしたと謝罪の言葉を述べているのを私は何度も見ました」




「壬生浪士組の為に強さを見せつけることもありました、それができたのだって稽古を欠かさなかったからです

道場にこそ芹沢さんは行きませんでしたが
決まった時間に素振りをしていることを私は知っています」




「過度な行いが気に入らないのなら壬生浪士組から切り離せば良かったではありませんか

どうして、排除するのです」




言い切って、周りを睨みつければその反応は様々なものだった。

目をそらす者、そんなこと聞いていないとでも言わんばかりの表情をする人、
真剣にまっすぐ私を見据えてくる人。




そんな中、沖田さんに視線を移せば




「フ....アハハッ」




あろうことか声を上げて笑っていた。




私が言っていたことは何か間違っていただろうか、何かをはき違えていただろうか。
記憶を辿るが見つからない。




驚きの表情で、沖田さんを見ていれば視線に気付いたのか「ごめんごめん」と手を振る。




「笑われるようなことを
言った覚えがないのですが....」




いつもより幾分か低い声が出た。
ああ、私は腸煮えくり返っているのかと自覚する。

私が怒りに震えている事は伝わっただろうに沖田さんは笑うことをやめない。




「フフ、いや
別に伊勢ちゃんは間違ってないけど

芹沢さんは伊勢ちゃんに
何も教えてなかったんだぁって思って」




「どういう意味ですか」




「総司、やめろ」




嫌な言い方。
まるで私を煽っているよう。




土方さんが何か止めようとしていたが私達の耳には誰の声も通らない。




「芹沢さんが殺されたのは




国から命が出たからだよ」