「確かにあんたにはそんなことはできないだろう」




「はい!」




「感情がすぐに顔に出る上に、子供のような行動をする」




「あの、」




それは褒められているのだろうか、
眉を寄せていれば斎藤さんはクスクスとわらいながら私から離れた。




「だが、その真っ直ぐさすら利用する奴もいる」




斎藤さんも私のことを心配してくれているのだろうか、そう思えば嬉しくなり頬をかいた。




「では、その対立関係が修復されたらまたここに来ても良いということでしょうか」




「........ああ」




一瞬斎藤さんが気まずそうな顔をしていたが、望んていた答えを返してくれたので安心する。

今はただ前向きに考えようと誓い、私は壬生浪士組屯所を後にした。




――――――――



――――



――




「....伊勢ちゃんが来たの?」




伊勢を見送って自室に戻ろうとしていた斎藤に沖田が声をかける。斎藤は気配で気づいていたのでさして驚きはしなかった。




「ああ」




「芹沢さんと“僕たち”のこと言ったの?」




「俺たちのことは伏せた、気に病むかもしれんからな」




斎藤は伊勢に「暗殺を考える奴もいる」と言ったがそれが自分たちだとは言えなかった。
適当な理由をつけて返せば沖田は鼻で笑う。




「一くん、随分伊勢ちゃんの前ではいい子ぶるんだね

本当は嫌われたくないから隠したんでしょ?」




図星を突かれ斎藤の肩がはねる。
伊勢のことだ、芹沢を自分たちが暗殺しようとしているなどと言えば顔も合わせてくれないだろう。

甘味処へは週に何回か通っているためそれだけは避けたい。




「あんたでもそうしたのではないか?」




「....どうだろうね、僕は芹沢さんより自分の方が好かれてると思ってるよ」




悔しそうに斎藤が顔を背けてそう言えば沖田は自信ありげな顔で返す。
その光景はまるで子供がお気に入りの玩具を取り合うようだ。




「しかし、あの娘は....芹沢さんに惚れているのやもしれん」




「ッ?!伊勢ちゃんがそう言ったの?!」




「突き放されて涙を流していた....真意はわからないが」




斎藤には恋い慕う人に突き放されて涙を流したように見えたのだろう、実際伊勢は「親のようで」とは口にしていないのでそう考えるのも無理はない。




二人の憂鬱はこのあとも続いたという。