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「帰れ、小娘」




「え」




ここは壬生浪士組屯所前の門、
私がいつもどおり、番をしていた隊士の方に取り次ぎを頼もうとしたら芹沢さんが現れた。




それは見たこともない、冷たい表情で。




ただ「帰れ」とだけ言われ頭の中が真っ白になる。またいつもの冗談かとも思いどうしたのかと問えば、




「二度と来るな」




と言われるだけ。




手のひらを返したようなその態度に私はその場にへたりこんだ。
隊士の方達も芹沢さんのように私に冷たい視線を送る。




――どうして。




誰の手にも渡らなかった甘味を見つめながらしばし固まり続けた。




――私は知らぬ間に何かしてしまったのではないか。




――もしかしたら甘味で腹でも下したのだろうか。




――私のことなど飽きてしまったのだろうか。




じわりと涙で滲む視界。
そこに誰かが近づいてきたのがわかった。




ボヤけて何も見えない、かろうじて着流しの紺色が見えるくらいだ。

少し恥ずかしくなって袖で顔を強く拭っていれば腕を掴まれた。




「やめておいた方がいい、肌が痛むぞ」




堅苦しい話し方に何故か吹き出してしまう。
顔を上げれば斎藤さんが顔をしかめていた。




「すみません、ここお邪魔でしたか?」




「............何故泣いている」




そのことに触れて欲しくなくて
にへらと笑ってみたが、効果はなかったらしい。また視界が涙でぐにゃりと歪んだ。