「フン、あの小僧はまだ小娘を目の敵にしておるのか」




芹沢さんが甘味をつまみながら楽しそうに私の話に相槌を打つ。




「何故信用していただけないのでしょうか?それと、小娘ではなく伊勢です」




「わしと関わりがあることに不審感を抱いているのだろう、お前のような小娘なら尚の事」




「そう思うのなら少し行動をお控えになってはいかがですか?私は小娘ではなく伊勢ですが」




「わしに意見を申すか、このような事小娘くらいにしかできんぞ」




「ですから小娘ではなくッ――....もういいです」




低い笑い声をあげるその人を睨めば口はより弧を描く。この人は反論する私を見て楽しんでいるのだろうか、と呆れていれば芹沢さんの顔つきが変わった。




「筆頭、急ぎお伝えしたいことが」




この声は芹沢さんの部下の新見錦(にいみにしき)さんだろう。いつもの柔らかな口調とは違い、重々しいものを感じて私にも緊張が走る。

芹沢さんは眉をひそめると静かに答えた。




「....今は客人がおる、あとにせい」




その一言から私が聞いてはならない話だと悟り、芹沢さんに目線で立ち去ろうかと告げる。

芹沢さんは何か考えたあと、大きなため息と共に「入れ」と言った。




心の中で好奇心が疼いたが、私は帰路についた。









その日からだろうか、




壬生浪士組の雰囲気が重苦しいものに変わったのは。