壬生狼の花











「伊勢くんか!総司から話は聞いてるぞ
私は近藤勇というものだ、よろしくな」




また沖田さんか、苦笑いをこぼす。
近藤さんは土方さんと正反対で温和な性格らしい、私に握手までしてくださった。




心を読まれたのか土方さんに睨まれたがこの際無視させてもらう。




「あの、よかったら甘味はいかがですか?
多めに持ってきたので」




「おお!ではさっそくいただ」

「ちょっと待て近藤さん」




大きな風呂敷の中から小分けしてある包みを取り出し手渡そうとする。しかしそれは土方さんに遮られてしまった。




「毒入りかもしれねぇ、あんたは人を信用しすぎだ」




「しかしだな....」




またここの人達は....食べ物を差し出せばそういう考えしか浮かばないのだろうか、ああ芹沢さんもそうだったなと思い出す。

私は土方さんの胸に甘味を押し付けるとキチンと目を合わせて言い放った。




「毒など入っていませんよ
私の大事な甘味たちにそのようなものは入れません」




いつぞや芹沢さんに言った言葉をそっくりそのまま伝えれば、しばし私と甘味を交互に見る。




「――――――なら、俺が先に毒見役をする」




結局誤解はとれなかったようだが食べてはくれるらしい。「では、」と踵を返すと私は芹沢さんの部屋へと歩を進めた。