壬生狼の花











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「――で、あの小娘はなにか?
芹沢さんの隠密か何かか?」




伊勢が帰ったあと、土方の部屋には斎藤、沖田、藤堂の三人が集められた。
もちろん伊勢の素性についてだ。




手を焼いている芹沢さんの友人だと言われて「はいそうですか」と認めるわけにもいかないだろう。

そこで甘味処の常連となった三人に聞くという結果に至った。




「あの子に隠密?....プッ!
無理ですよムリムリ」




なんでもすぐ顔に出るし〜と、沖田が笑いながら話す。




「確かに、我々も先程知って一瞬何か考えがあるのかと疑いもしました....しかしその線は無いかと」




「俺も俺も!ビックリはしたけど
あいつはそんなことできねーよ!」




隠密であることをここまで否定されるのも、どれほど分かりやすい人間であるのかと土方は渋い顔をする。




「とにかく....用心しとくに越したことはねぇ....お前らに対しての態度だって、演技かもしんねぇぞ?」




そうひと睨みしながら言えば部屋の空気がピンと貼り詰められる。




「まあ、仮に演技だったとしたら....彼女は何するんですか?」




それもそうだろう、仮に伊勢が隠密か何かだったとしてどうするというのだ。
壬生浪士組の内部分裂の為に雇うなんていうのもちゃんちゃらおかしい話だろう。




土方は核心を突かれ、ウッと答えに詰まるが要はぽっと出の女など信用できないと言いたいんだろう。




「芹沢さんの考えることは俺にはわからねぇ....だから疑うんだろうな」




大きなため息と共にそう言う土方を見て沖田はクスクスと笑い出した。