『沼田だな。そいつを地面に置け』


厳ついサングラスをかけ髪をワックスでしっかりと固めた、黒いスーツ姿の男だ。

後から来た男が低い声を轟かせると、沼田と呼ばれる気の弱そうな男は、汗を垂らしながら抱え込んでいたアタッシュケースをそっと地面に置いた。

その様子を、サングラスの男は顔色一つ変えずに見つめる。

そして、ゆっくりとアタッシュケースに近付いていくと、彼はそれを手に取り呟いた。


『……ハエが1匹、いや……2匹か。随分と嘗めた真似をしてくれるな』

『……っ、どういう』


――その時だった。


『レイラ!』


辺りを切り裂く叫び声。

気付いた時には、遅かった。

若い男の子目の前には、恐らくあのサングラスの男の仲間と思しき、立派な顎髭を生やしたガタイの良い男が1人。

そして、その腕に捉えられた女の姿があった。