(ここは何処……?)


人気のない錆びれた駐車場の影に2人、男と女は辺りに警戒しながら、息を潜めていた。

潜入からどれ位経ったのだろうか。

彼らの額には、びっしりと汗が滲んでいる。


『来たわ』


コツ、コツ、誰かが近付く音がして、女は呟いた。


『あんま大きい声出すんじゃねぇぞ』

『貴方もよ、神名恭介(じんな きょうすけ)』


男の名は、どうやら“神名恭介”と云うらしい。


(ちょっと待って。隣の人は、私? でも、こんな男知らない……)


『あとは奴が来るのを待つだけだ』

『そうね』

『上手く行きゃあ良いが……』


視線の先には、紺のスーツに赤いネクタイを締めた、40代くらいの小太りな男性。

彼は何やら大事そうにアタッシュケースを抱き、こせつかない様子で視線を泳がせていた。

コツ、コツ。

1分もしない内に、新たな足音が大きく空間に響いた。