「泣かないのね。可愛げないわね。」
バカにしたように安田さんが言う。
「…悪かったわね。可愛げなくて。」
「ううん、可愛げなくて安心したわ。
こんな可愛げない子、西村君好きになるはずないじゃない。
だから、別れてね。」
そう言って安田さんは取り巻きを引き連れてトイレを出て行った。
「さてと、私も教室戻ろっかな。」
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教室へ戻るとマナちゃんと由佳ちゃんが心配そうに私の顔を見ていた。
「ねえ、彩ちゃん、ほっぺ赤いよ?」
「ま、まさか安田に叩かれたんじゃ…」
あ、安田さんに叩かれたところ赤くなってたんだ。まあ、痛かったしね。
私が黙っていると2人はますます心配そうに私の顔を覗き込む。
おっと、心配かけないようにしなくちゃ。
「2人とも、心配しないで。ちょっとぶつけちゃっただけだから。」
私がそう言うと2人は安心した様子だった。
「よかったあ。彩ちゃんに何かあったらどうしようかと思ったよぉ。」
「ったく、彩はドジね。
でも、何かあったらちゃんと言うのよ。」
「うん、ありがと!」
私は本当にいい親友を持ったなあ。
そう思いながら笑顔で返事をした。

